進行消化器がんにおける血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いたリキッドバイオプシーの臨床的有用性:
SCRUM-Japan GI-SCREENとGOZILA study

Clinical utility of circulating tumor DNA sequencing in advanced gastrointestinal cancer:
SCRUM-Japan GI-SCREEN and GOZILA studies

Nakamura Y, et al. Nat Med. 2020:26(12);1859-1864.
著者にガ―ダントヘルス社の社員が含まれている。

本試験は、消化器がんを対象とした臨床試験のスクリーニング検査として、リキッドバイオプシーの有用性を組織検査と比較した観察研究です。

試験デザイン

Guardant360®を用いたリキッドバイオプシーの有用性を組織検査と比較しました。

【目 的】消化器がんを対象に腫瘍組織検査とリキッドバイオプシーで臨床試験のスクリーニング検査としての有用性を比較する。

試験デザイン|目的

【対 象】2015年2月から2019年4月の期間にGI-SCREENに登録された5,743例(解析対象5,621例)及び、2018年1月から2019年8月の期間にGOZILA studyに登録された1,787例(解析対象1,687例※1)の進行消化器がん患者
【方 法】GI-SCREENでは、腫瘍組織を採取し、遺伝子パネル検査(LDT)※2を用いてがん関連遺伝子の異常を調べ、GOZILA studyでは、血液を採取し、Guardant360を用いたリキッドバイオプシーで74のがん関連遺伝子の異常を調べた。

【評価項目】結果報告までの期間、臨床試験登録までの期間、臨床試験登録患者割合、客観的奏効割合(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、ctDNAプロファイルなど

【解析計画】観察研究であり、統計学的な症例数の設定は行わなかったが、GI-SCREENとGOZILA studyの解析対象患者数は、それぞれ5,621例、1,687例であり、30%に治療標的となる遺伝子異常が検出され、うち10%が臨床試験に登録されると仮定した。その結果、期待される登録患者数はGI-SCREENが169例、GOZILA studyが51例となった。GI-SCREENとGOZILA studyの群間比較では、カテゴリー変数の場合はFisherの正確確率検定またはχ2検定、連続変数の場合はMann-Whitney検定を用いた。生存期間はKaplan-Meier法で推定し、群間比較はLog-rank検定で行った。また、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

※1 大腸がん654例、胃・食道腺がん260例、食道扁平上皮がん108例、膵管腺がん363例、胆管がん188例、その他114例

※2 腫瘍組織を用いた遺伝子パネル検査(LDT)で、143もしくは161の遺伝子異常の有無を評価した。

検査成功率と結果報告までの期間

リキッドバイオプシーでは、組織検査と比べて、結果報告までの期間中央値が22日間短縮しました。

検査成功率はGI-SCREENが89.4%、GOZILA studyが99.9%でした。
登録から結果報告までの期間の中央値はGI-SCREENが33日に対してGOZILA studyでは11日と、GOZILA studyで有意に短いことが示されました(p<0.0001、Mann-Whitney検定)。

検査成功率と結果報告までの期間

臨床試験に登録された患者の割合と推移

リキッドバイオプシーにより臨床試験に登録された患者の割合は組織検査の2倍以上でした。

治療標的となる遺伝子異常を有する患者のうち、臨床試験に登録された患者の割合は、GI-SCREENが4.1%、GOZILA studyが9.5%であり、GOZILA studyで有意に高いことが示されました(p<0.0001、χ2検定)。

臨床試験に登録された患者の割合

GOZILA studyにおける登録可能な臨床試験数はGI-SCREENより少数である(11試験 vs. 28試験)にもかかわらず、
GOZILA study開始後は1ヵ月あたりの登録患者数が8.1人/月と増加しました。

臨床試験に登録された患者数の推移

治療標的となる遺伝子異常が同定された患者の割合

リキッドバイオプシーでは57.2%の患者に治療標的となる遺伝子異常が同定されました。

治験で検討中のバイオマーカーまで含めると、GI-SCREENでは54.3%、GOZILA studyでは57.2%に治療標的となる遺伝子異常が同定され、GOZILA studyで有意に高値でした(p=0.041、Fisherの正確確率検定またはχ2検定)。

治療標的となる遺伝子異常が同定された患者の割合

客観的奏効割合(ORR)と無増悪生存期間(PFS)

リキッドバイオプシーでスクリーニングした患者群でも、組織検査と同様のORRとPFSが示されました。

ORRは、GI-SCREENが16.7%、GOZILA studyが20.0%であり、有意差は認められませんでした(p=0.69、Fisherの正確確率検定)。PFS中央値も、それぞれ2.8ヵ月、2.4ヵ月であり、有意差は認められませんでした(p=0.70、Log-rank検定)。

ORRとPFS

臨床試験に関する詳細資料

上記以外にも、製品に関する主要な臨床試験の詳細を解説しています。

進行消化器がんにおける血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いたリキッドバイオプシーの臨床的有用性:
SCRUM-Japan GI-SCREENとGOZILA study

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